HMIは製造業のさらなる生産性の向上やコストの削減において、欠かせないツールの一つといえるでしょう。ただ、「具体的にどのようなものをHMIというのだろうか」と疑問に思う方も少なくありません。
そこで本記事では、3つの具体例と関連する注目の技術、導入のポイントを紹介します。
目次:
HMIの具体例HMIに関連する注目の技術HMIを導入する際のポイントHMIの導入ならPro-faceHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)とは
HMI(エイチエムアイ、Human Machine Interface - ヒューマン・マシン・インターフェイス)は、人間と機械が情報をやりとりする手段や装置の総称です。具体的には、機械やシステムの状態を人間に分かりやすく表示し、同時に人間からの指示を機械に伝える役割を果たします。
例えば、タッチスクリーン、キーボード、マウス、各種ボタン、表示灯などのハードウェア に対して、制御を行うPLCに指示を与えたり、PLCの情報を表示したりするのがHMIの役割 です。近年、音声認識やAR/VR装置など、データ通信が可能な多様なHMIデバイスが登場しています。
ここではHMIの動向と将来性について紹介します。
HMIの動向
HMIは現在、IoTやAI技術の発展とともに、直感的で高度な情報を伝達できるようになっています。例えば、音声認識やジェスチャー認識による操作、AR/VR技術を活用した没入型の体験、ユーザーの状況や好みに合わせたパーソナライズなどが実現されつつあります。
製造業において注目されている技術の一つが産業用HMIです。タッチパネルディスプレイや音声制御、ウェアラブルデバイス、触覚フィードバックなど、多様なHMI技術が現場の生産性と安全性を向上させるために開発されています。
HMIの将来性
HMIはAIやIoT、5Gなどの技術革新とともに、さらにその市場や利用用途が広がることが予想されます。人間と機械のコミュニケーションがより自然かつシームレスになり、高度な自動化が実現するでしょう。
調査によると、HMI市場は、2024年から2029年の予測期間中に年平均成長率(CAGR)7.90%で成長し、2029年には73億4,000万米ドルに達すると予測されています。
HMIの具体例
HMIとはどのようなものなのか、より理解を深めるために、ここでは3つの具体例を紹介します。
自動車
自動車におけるHMIはディスプレイやメーター、カーナビ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)などがHMIの具体例です。近年では、タッチパネルやジェスチャー認識による直感的な操作、ドライバーの疲労を検知するシステム、車両とスマートフォンとの連携など、安全性と快適性を向上させるさまざまなHMI技術が開発・導入されています。
今後、自動運転技術の進展とともに、HMIの役割はますます重要になるでしょう。例えば、自動運転モードと手動運転モードの切り替えや緊急時の対応など、ドライバーとシステムとの円滑なコミュニケーションを可能にするHMIの開発が求められています。
PC・スマートフォン
PCやスマートフォンは、キーボードやタッチスクリーンで操作する身近なHMIの一例です。音声認識技術も普及し、音声による検索やテキストの読み上げが可能になり、ますます便利になっています。
旧式の携帯電話はボタン操作が主流でしたが、スマートフォンが登場してからは、タッチパネルによる直感的な操作が一般的になりました。このようにHMIは時代とともに進化し、より使いやすく、人間にとって自然なインターフェイスへと変化しています。
SCADA
SCADA(監視制御システム)はPLCなどのコントローラーから情報を収集し、監視・表示するシステムです。
SCADAのHMIは、稼働状況や異常の発生をオペレーターに迅速かつ正確に伝達する役割を担います。例えば、各装置の稼働状況や温度、圧力、流量などのデータをリアルタイムで表示するため、作業員は異常が発生した場合でも迅速に原因を特定し、適切な対応を取ることができます。
今後、製造現場の自動化やIoTの普及が進むにつれて、SCADAにもより高度なHMIが求められるようになるでしょう。例えば、AIを活用した異常予測やAR技術による現場作業の支援など、HMIの進化はSCADAの価値をさらに高める可能性を秘めています。
HMIに関連する注目の技術
今まで説明してきたとおり、HMIは将来性を期待されています。ここではHMIの可能性をさらに広げる、注目の技術を5つ紹介します。
エッジコンピューティング
エッジコンピューティングは従来クラウドで行われていたデータ処理を、データ発生源に近い「エッジ」と呼ばれる場所で実行する技術です。クラウドにデータを送 るのではなく、現場の分散コンピューターで処理します。
製造業では、IoTセンサーを使って温度や湿度、振動などのデータを収集し、エッジコンピューティングによってリアルタイムで分析すれば、機器の迅速な異常検知や故障予測に役立てることができます。エッジコンピューティングの処理結果は、HMIを通じてオペレーターに表示させることも可能です。
AI
HMIの進化には、AIが不可欠です。HMIは人間と機械を繋ぐ役割を持ちますが、人間の判断は人によって異なる場合があるためです。
AIは機器の情報や操作方法を学習することで、人間よりはるかに正確な判断ができるようになります。例えば、画像認識AIを搭載した工場のHMIは、製品の外観検査を自動化し、不良品の検出精度を向上させることができます。
BMI
BMI(Brain Machine Interface)とは、脳と機械を直接繋ぐインターフェイス技術のことです。脳波や神経信号などの脳活動を読み取り、コンピューターで解析することで、外部機器の操作や情報伝達を可能にします。
例えば、卵を割らずに掴むロボットハンドは、脳の動きを再現し、適切な力加減を伝えることで実現できるBMI技術の一例です。現在、脳にセンサーを埋め込んで機械を制御する実験が行われており、医療分野での応用や高度なロボット制御の実現に向けて研究が進められています。
しかし、脳の動きは非常に複雑であり、未解明な部分も多いため、実用化には時間がかかる見込みです。脳信号の正確な読み取りや安全な情報伝達など、解決すべき課題は多く残されています。
AR・VR
AR(拡張現実)とVR(仮想現実)は、現実世界とデジタル情報を融合させる技術であり、製造業におけるHMIを革新する技術として注目されています。
例えば、VRは製品の設計とプロトタイプ作成を仮想環境で行うことが可能になり、コスト削減と開発期間の短縮につながります。また、VR空間でリアルな3Dモデルを作成し、さまざまな角度から検証したり、動作シミュレーションを行ったりすることで、設計の精度向上や問題点の早期発見に繋がります。
ARは現実の世界を見ながら、仮想の情報を同時に表示できる技術です。ARが実現されれば、作業手順や指示などをより効率的かつ安全に作業を行えるようになるでしょう。例えば、熟練作業者の動きを表示して新人作業員のトレーニングに活用したり、機械のメンテナンス情報を表示して作業時間を短縮したりすることができます。
5G
5Gとは、4Gの後継となる新しい通信規格です。高速・大容量通信、低遅延、多数同時接続といった特徴を持ち、日常生活やビジネスに大きな変革をもたらすと期待されています。
5Gの普及が進むと、HMIはリアルタイムで大量のデータを処理・分析できるようになります。製造ラインの異常を検知した場合、即座にアラートを発したり、問題のある箇所を特定したりすることで、ダウンタイムを最小限に抑えられるでしょう。
デジタルツイン技術と組み合わせれば、仮想環境で行われたシミュレーションの結果を即座に反映させることが可能になります。結果としてさらなる生産効率の向上や品質改善、コスト削減などが期待できるでしょう。
HMIを導入する際のポイント
HMIはさまざまな技術に関連性がありますが、導入の前にしっかりと検討することが大切です。ここではHMIを導入する際のポイントを3つ紹介します。
導入目的の明確化
HMIを導入する際は、導入そのものが目的にならないようにすることが重要です。HMIは業務を改善するものであり、導入自体が目的ではありません。
HMIの導入目的は、業界や業種によって異なります。製造業であれば製造ラインの停止リスクを減らすこと、建設業であれば現場監督の管理業務効率化などが目的となるでしょう。
目的が明確でないと、適切なHMIの選定や機能の検討が難しくなります。導入前には関係者間で十分に議論し、認識を共有しましょう。導入後も目的に沿って効果的に活用されているかを確認することが大切です。
自社課題の把握
HMIの導入には、現行業務の課題把握が重要です。問題点を正確に把握できれば、自社にとって最適なHMIを導入できます。
例えば、設備管理では、次のような課題が挙げられます。
- トラブル発生時の情報伝達が人手を介しており、対応が遅れる
- トラブルの予兆検知がベテランの経験や勘に依存している
- 情報の記録や管理が紙ベースで行われており、データの活用が難しい
上記のような課題から、自社にはリアルタイム監視や情報を一元管理できるHMIが必要であるとわかります。
課題を解決するためには、現場担当者へのヒアリングを通じて、具体的な問題点を深く理解し、HMIがどのように貢献できるのかを説明することが重要です。現場担当者の理解と協力を得ることで、HMI導入後のスムーズな運用や効果的な活用に繋がります。
費用対効果の分析
HMIを導入するには、費用対効果の検証が不可欠です。HMIの導入による効果が費用を上回らなければ、企業にとって負担になりかねません。
ただ、コストの削減や生産性の向上といった定量的な効果だけでなく、従業員のモチベーションや安全性の向上、装置のデザイン性の向上など、定量化が難しい間接的な効果も導入の決め手になる場合があります。HMI導入を検討する際には、このような定量化できない効果も考慮に入れ、総合的に判断することが重要です。
HMIの導入ならPro-face
HMIは現在の動向や将来性が幅広く期待されています。エッジコンピューティングやAIといった最新技術とともに注目されており 、製造業においては生産性の向上やコストの削減が期待できるでしょう。
HMIは自社に合ったものを選ぶことが大切です。SchneiderのPro-faceブランドはHMIのパイオニアであり、装置・機械の設定に便利な小型のサイズのHMIからPLC機能一体型やIT向けのゲートウェイ機能を搭載した高性能モデルも用意しています。まずはお気軽にお問い合わせください。